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人工関節の手術が怖いときはセカンドオピニオンで別の治療法も相談

人工関節の手術が怖いときはセカンドオピニオンで別の治療法も相談

納得して治療法を選ぶために知っておきたいこと


人工関節の手術に迷うときは、セカンドオピニオンなどで別の医師に相談し、手術のほかの選び方や、よくなるまでの見通しを確かめることができます。同じ膝の痛みでも、症状や暮らしの事情は人それぞれのため、知人の経過ではなくご自身の状態から考えることが大切です。この記事では、手術をしない治療を続ける目安と限界、手術の前に確かめたいこと、主治医との関係を保ちながら別の医師に相談する手順をお伝えします。


この記事の要点まとめ


  • 手術への不安や、ふだんの暮らしで困っていることを整理し、ご自身の症状をもとに治療の進め方を相談しましょう。
  • 薬や注射、リハビリ、再生医療などの選び方は、これまでの治療や膝の状態をふまえて考えます。
  • 手術の目的やリスク、回復の見通しを確かめ、紹介状や検査の資料をそろえて別の医師にも相談できます。

人工関節の手術が怖いとき、何を基準に考えればいい?


同じ膝の痛みでも、症状は人によってちがうため、判断の出発点はご自身の診断の内容と、ふだんの暮らしで困っていることです。手術への怖さをひとりで抱えこまず、不安の中身を具体的に分けて医師に伝えると、納得できる治療を選びやすくなります。


知人の経過ではなく、自分の膝の症状と生活への支障から考える


痛む場所が同じ膝でも、軟骨のすり減りかたや炎症の強さは、人によってちがいます。そのため、日本整形外科学会認定 整形外科専門医などの診断をふまえ、いろいろな治療法から自分に合うものを考えることが欠かせません。知人の手術のあとの経過は、年齢や変形の広がり、からだの状態、ふだんの動く量がちがえば、そのままあてはまらないためです。「仕事のあとの階段がつらい」「立ち仕事が続けにくい」「家族の通院に付きそって長く歩けない」など、まずは暮らしのどこに困りごとが出ているかを書き出してみましょう。


怖さを「入院・術後の痛み・家族の世話・仕事」に分けて書き出す


手術への恐怖心は、頭の中だけで考えていると大きく膨らみがちです。麻酔や合併症への心配、術後の痛み、入院中の家族の世話、仕事を休む期間といった項目に分けて紙に書き出してみてください。人工膝関節の手術後に「動かすのが怖い」と感じる運動恐怖は一定の割合でみられ、術後のリハビリテーションの妨げになりうることが報告されています1。不安を事前に言葉にして医療者へ伝えておくことは、落ち着いた気持ちで治療やリハビリに向き合う助けになります。


手術以外の治療は、どこまで続けられる?


手術以外の治療を続けられるかどうかは、これまでに行ってきた治療の内容と、現在の生活への支障の度合いによって変わります。関節内注射だけでなく、運動療法や物理療法、自由診療の再生医療まで含めて、今の膝の状態に合う選択肢を整理していきます。


薬・注射・リハビリを続ける余地と限界を相談する


手術をしない保存療法を見直すときは、まずこれまでの経過を振り返ります。これまで使った飲み薬や湿布、ヒアルロン酸などの関節内注射、リハビリテーションの内容と期間を書き出してください。痛みが和らいでいた期間もあわせて医師に伝えます。整形外科のリハビリテーションでは、筋力や関節の動きを保つ運動療法と、温熱や電気などを用いる物理療法を組み合わせて進めます。


一方で、痛みで仕事や階段の上り下りに支障が増えている場合や、歩行中に「膝が抜ける感じ」「関節がグラグラする感覚」が出てきたときは、保存療法の限界を含めて相談するタイミングです。


APS/PRP療法は自分にも検討できるのか


保存療法と手術のあいだで考えられる選択肢として、ご自身の血液をとって加工し、関節の中に注射するAPS療法やPRP療法といった再生医療があります。これらは傷んだ組織の回復や、炎症をしずめることを目指す治療ですが、すべての方に合うわけではありません。関節の変形が強く進んでいる場合など、膝の状態によっては対象にならないことがあります。


また、APS療法やPRP療法は健康保険が使えないため、費用はすべて自分で払うことになり、通うための手間もかかります。注射の回数や通う期間、費用は、受ける医療機関や膝のようすによって変わります。一般的には、費用は診察のときに案内されます。


注射のあと数日ほど、注射したところに腫れや痛み、熱っぽさが出ることがあります。ご自身の膝で検討できるか、処置の流れや費用はどうなるかを、診察のときに医療機関へ確かめてください。


手術を先延ばしにするときに気をつけたいこと


手術が怖いからと痛みを我慢し続けていると、無意識のうちに膝をかばって歩くようになります。その結果、外出や動く機会が減って太ももの筋力が低下し、反対側の膝や腰にまで負担が広がることがあります。また、関節の変形がさらに進むと、将来手術を受けることになった際にリハビリテーションに時間がかかる要因にもなります。「もう少し様子を見たい」と考える場合でも、自己判断で通院をやめず、何か月後にレントゲン検査などで再評価するかを医師とあらかじめ決めておくことが大切です。


ポイント

これまでの治療歴と生活の困りごとを整理し、再評価の時期を決めたうえで保存療法や別の選択肢を相談しましょう。


人工関節手術を選ぶなら、何を確かめておけばいい?


手術を検討する段階では、手術の目的や主なリスク、耐用年数、そして生活に戻るまでの見通しをご自身の環境に当てはめて質問しておくことが判断材料になります。疑問を一つずつ解消できるよう、診察で確認したい項目を整理しておきましょう。


人工関節手術の目的・主なリスク・耐用年数をどう確認するか


人工関節の手術のおもな目的は、痛みをやわらげて歩く力を保つことです。診察では、傷んだ関節をまるごと置きかえる全置換術(TKA)と、内側など一部だけを置きかえる部分置換術(UKA)のどちらが合うかを尋ねてみましょう。あわせて、感染症や血栓症などのリスクも確かめておきます。


人工膝関節では、手術のあとに膝がぐらつく「不安定性」が、入れかえの再手術が必要になる理由として増えています2。なお、人工関節がどのくらい持つかは、活動量や関節の状態などで変わります。交換の時期が決まっているわけではないため、定期的な経過観察が欠かせません。


入院期間・術後リハビリ・仕事や付き添いの再開時期を質問する


手術を受ける病院では、自分の毎日の予定にかかわることを具体的にたずねます。入院する日数や退院したあとの歩きかたの注意、外来のリハビリに通う回数、スーパーでの立ち仕事や買い物、家族の通院の付きそいをいつごろからまたできるかの目安です。手術のあとの経過は人によってちがい、手術の前からの筋力や運動の取り組みがかかわることもあります。入院している間、家族の世話や家事をだれに頼むか、介護保険のサービスや地域の手助けを使えるかも、手術の日を決める前にまわりと話し合っておくと、落ち着いて準備ができます。


主治医との関係を保ちながら、別の医師に意見を聞くには?

主治医との関係を保ちながら、別の医師に意見を聞くには?

セカンドオピニオンは、現在の主治医のもとで治療を続けることを前提に別の医師の助言を得る仕組みであり、紹介状を頼むこと自体は珍しいことではありません。相談の仕組みや準備物を知り、通いやすい地域の医療機関も活用しながら方針を考えていきましょう。


セカンドオピニオンと転院の違い、費用の目安


病院を移る「転院」とは異なり、セカンドオピニオンは診断や治療方針について別の医師の意見を聞き、元の主治医へ報告して治療方針を決める制度です。正式なセカンドオピニオン外来は、原則として健康保険が使えない自由診療(全額自己負担)となります。


一般的には、30分〜1時間ほどの相談で数万円前後のことが多いですが、料金は医療機関ごとに異なります。申し込みから実施までに日数がかかることもあります。


ほかに紹介状作成料や画像データの準備費がかかる場合もあります。費用や相談の扱いは、各医療機関の窓口で確かめられます。


紹介状・画像データ・服薬情報の準備と、主治医への伝え方


別の医師へ相談する際は、これまでの経過がわかる資料を揃えることで具体的な助言が得られます。


  • 紹介状(診療情報提供書)と画像データ:レントゲンや検査の結果がわかるもの
  • これまでの治療歴とお薬手帳:注射やリハビリの内容、いま飲んでいる薬
  • 質問メモ:暮らしで困っている動きと、確かめたいこと

主治医へ切り出すときは、「先生の説明は理解できましたが、手術に不安があるため、前向きに考えるためにも一度別の意見も聞いて納得したいです」と感謝を添えて伝えます。異なる意見を受けた場合は、その内容を主治医へ持ち帰って改めて話し合います。


地域での相談から、必要に応じた病院紹介へ


仕事や家族の通院付き添いを続けながら膝の治療を考える場合、まずは通いやすい地域のかかりつけ医で相談する進め方があります。手術を含めた詳しい検査や治療が必要になった段階で、近隣の総合病院へ紹介を受けます。


当院では、名古屋市立大学病院、JCHO中京病院、名古屋第二日赤十字病院、大同病院、名古屋市立東部医療センター、JA愛知厚生連海南病院とつながりを持ち、必要に応じてご紹介しています。お子さまからお年よりまで、「あそこに行ったら大丈夫」と思っていただけるよう、まずはお気軽にご相談ください。


よくある質問(FAQ)


Q. 人工関節手術後、痛みはいつまで続きますか?


A. 手術直後の強い痛みは数日から数週間かけて落ち着いていくことが多いですが、関節の違和感や動かしたときの痛みが和らぐまでの期間には個人差があります。術前の膝の状態や筋力、動くことへの恐怖心などもリハビリテーションの進み方に影響しうるため1、痛みの管理方法や回復の目安については執刀医へ事前にご確認ください。


Q. 別の医師の意見が主治医と違った場合、次はどうすればいいですか?


A. 3人目の医師に意見を聞く(サードオピニオン)という方法もありますが、情報が多すぎるとかえって迷いが深まることもあります。まずは2人目の医師から聞いた「なぜその治療法を勧めるのか」という理由をメモにまとめ、元の主治医へ伝えて、ご自身の生活背景に照らし合わせながら一緒に整理していくことをお勧めします。


Q. 人工膝関節置換術の自己負担額はどのくらいですか?


A. 人工膝関節置換術そのものは健康保険が使え、窓口で払うのはかかった費用の1割〜3割です。さらに「高額療養費制度」を使うと、年齢や収入に合わせて、ひと月に払うお金に上限がもうけられます。ただし、差額ベッド代や食事代、日用品などは別に払う必要があるため、手術を受ける病院の窓口などで全体の目安をたずねてください。


参考文献


1. Du X, Shao Y, Xue J et al. Prevalence and influencing factors of kinesiophobia after total knee arthroplasty: a systematic review and meta-analysis. Journal of orthopaedic surgery and research. 2025. PMID: 40170179 / DOI: 10.1186/s13018-025-05752-w

2. Stroobant L, Marvellie A, Windels J et al. Instability after total knee arthroplasty: A systematic review and meta-analysis of treatment options and outcomes. Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA. 2025. PMID: 40938882 / DOI: 10.1002/ksa.70065

3. Saueressig T, Owen PJ, Zebisch J et al. Evaluation of Exercise Interventions and Outcomes After Hip Arthroplasty: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA network open. 2021. PMID: 33635329 / DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2021.0254


向藤原 由花

医師


えさき整形外科リウマチ科

院長

向藤原 由花

経歴
1989年
名古屋市立大学医学部卒業名古屋市立大学整形外科入局
名古屋市立東市民病院(現東部医療センター)整形外科
名鉄病院整形外科
春日井市民病院整形外科勤務
1995年
名古屋市立大学整形外科
1999年
JA愛知厚生連海南病院整形外科
リウマチ関節外科部長兼リハビリテーション科代表部長
2017年
医療法人紫雪会江崎整形外科院長
資格・所属学会
【資格】
日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医
医学博士
【所属学会】
日本整形外科学会
日本リウマチ学会
JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ学会)
日本人工関節学会
日本股関節学会
骨折治療学会
中部整形外科災害外科学会
日本運動器学会