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60代・70代の膝痛で手術以外の治療法には何がある?症状に合う選び方

60代・70代の膝痛で手術以外の治療法には何がある?症状に合う選び方

60代・70代の膝痛に対する手術以外の選択肢と選び方


60代・70代の膝の痛みには、運動やくすり、注射、サポーターなどの装具、ふだんのくらしの工夫といった、手術をしない治療(保存療法)があります。ひざの状態や持病に合わせて組み合わせます。


この記事では、それぞれの治療の目的や通院の目安、持病がある場合の注意点を整理しました。現在の治療を続けるか見直すかの判断基準や、医師へ希望を伝える際のポイントも確認していきます。


この記事の要点まとめ


  • 手術のほかに、運動やくすり、注射、サポーターなどの装具、くらしの工夫があります。ひざの状態や持病に合わせて組み合わせます。
  • 飲んでいる薬や生活の予定を医師に伝え、運動の内容や通院の回数を決めていきます。
  • 歩ける距離や階段の上り下り、夜の痛みをふり返り、治療の進め方を医師と相談します。

60代・70代の膝痛で選べる手術以外の5つの治療と役割の違い

60代・70代の膝痛で選べる手術以外の5つの治療と役割の違い

同じ膝の痛みでも、変形性膝関節症や半月板損傷、関節リウマチ、膝の裏が腫れるベーカー嚢腫など原因は患者様によって異なります。そのため、まずは診察とレントゲンやエコー(超音波)検査で骨や軟骨、炎症の状態を確かめたうえで、ご自身に合う保存療法を選ぶことが基本です。


運動療法:太ももの筋力と歩き方を整える治療の土台


運動療法は、膝を支える筋力と関節の動きを保ち、歩行時の負担を減らすための土台となる治療です。


変形性膝関節症に対する運動の種類を検討した研究では、筋力トレーニングや有酸素運動、ストレッチなどを組み合わせることで、痛みや歩行機能の管理に役立つ可能性が報告されています1。整形外科で行われるリハビリテーションには、理学療法士などと行う運動療法と、低周波や超音波などの機器を用いる物理療法があります。変化を実感するまでには数週間から数か月ほど継続するのが一般的な目安です1。


膝の湿布と飲み薬:痛みを抑えて動ける時間をつくる役割


湿布や塗り薬、飲み薬(消炎鎮痛剤など)は、関節の炎症や痛みを和らげて日常生活で動ける時間をつくるための補助的な治療です。湿布だけで軟骨のすり減りや関節の変形そのものを止めることはできません。


また、飲み薬は腎機能や血圧、胃腸に影響を及ぼすことがあります。内科で治療中の方は自己判断で薬を増やさず、医師へ相談してください。湿布であっても、貼る枚数や長時間の使用による皮膚のかぶれには注意が必要です。


ヒアルロン酸注射とPRP・APS療法の違い


関節内への注射には、保険診療で広く用いられるヒアルロン酸注射と、ご自身の血液成分から作製するPRP療法やAPS療法などの再生医療があります。ヒアルロン酸が関節の潤滑や緩衝を補うのに対し、PRP療法などは血小板やたんぱく質の働きを利用して関節内の環境を整えることを目的としています。


変形性膝関節症に対してPRPとヒアルロン酸を比較した研究では、痛みの推移などに違いがみられる可能性が示されていますが、変化の現れ方や持続期間には個人差があります2。なお、PRP療法やAPS療法は公的医療保険が適用されない自由診療であり、一般的な費用相場は1回あたり数万〜30万円程度です。記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではなく、実際の費用や検査・再診が含まれる範囲は医療機関により異なるため、受診先へ直接ご確認ください。注射後に一時的な穿刺部の痛みや腫れ、熱感が生じるリスクもあります3。


サポーター・インソール・生活調整と5つの治療の一覧表


サポーターや靴の中敷き(インソール)、杖などの装具は、歩行時の膝のぐらつきを抑え、関節の特定部位にかかる荷重を分散させる役割を担います。これら5つの治療法の特徴を一覧表にまとめました。


治療法主な目的期待できる変化通院頻度の目安持病がある場合の注意点
運動療法筋力と柔軟性の維持立ち上がりや歩行の安定週1〜2回または自宅継続血圧や心臓の負担に配慮して負荷を調整
湿布・飲み薬炎症と痛みの緩和痛みを抑え動きやすくする数週〜1か月に1回処方腎機能低下や高血圧では飲み薬の選択に注意
ヒアルロン酸注射関節の潤滑・保護動かしたときの引っかかり軽減初期は週1回を数回、以後適宜糖尿病がある場合は感染予防のため血糖管理を確認
PRP・APS療法関節内環境の調整慢性的な痛みの緩和を目指す単回〜数回(経過観察あり)自由診療。抗血小板薬などの服薬状況を確認
装具・生活調整関節への物理的負担軽減歩行時や階段での安定感作製・調整時に受診締めつけによる血行不良や皮膚トラブルに注意

表に挙げた通院頻度や変化の現れ方は一般的な目安であり、関節の変形の程度や生活環境によって実際の進め方は異なります。


ポイント

手術以外の治療は、痛みを和らげる薬や注射だけでなく、膝を支える運動療法や装具を組み合わせて関節への負担を減らすことが大切です。


持病や家族を支える役割がある人の手術以外の治療の進め方


持病の治療を受けている方や、仕事・ご家族の付き添いで入院や安静がむずかしい方は、飲んでいる薬と一日の過ごし方を医師に伝え、無理のない治療の計画を立てます。


高血圧・腎機能の低下・糖尿病がある場合に整形外科へ伝えたいこと


糖尿病の治療では、まず食事と運動が大切で、そのうえで薬による治療を行います4。そのため、膝の痛みを管理して歩ける状態を保つことは、持病の管理と両立しやすい取り組みです。


一方で、腎臓のはたらきが落ちている方は、消炎鎮痛剤で腎臓にさらに負担がかかりやすいため、できるだけ控え、使うときも短い期間・少ない量にとどめます5。注射を行う際も、血糖値や血液をサラサラにする薬の確認が欠かせません。整形外科を受診する際は、お薬手帳と直近の内科の血液検査結果を持参してください。


自宅で行う膝の運動の回数・頻度と中止を考える痛みの目安


自宅で行う運動は、関節に体重がかかりにくい方法から始めます。たとえば椅子に浅く腰掛けて片脚をまっすぐ伸ばし、太ももの前の筋肉に力を入れて5秒ほど保つ動きを左右10回ずつ、1日2〜3回を目安に続ける方法があります。


ただし、運動のとちゅうでするどい痛みが出るときは、いったんやめて医師にご相談ください。次の日まで痛みが強いまま引かないときや、膝が腫れたり熱っぽくなったりしたときも同じです。


買い物・階段・立ち仕事で膝への負担を減らす工夫


仕事やご家族のサポートを続けながら膝を守るには、日常の動作を少し変える工夫が役立ちます。


  • 買い物:重い荷物はカートやキャリーバッグを使い、袋を小分けにして片側に偏らないように持つ
  • 階段:手すりを使い、上りは痛くない脚から、下りは痛む脚から一段ずつ足を揃えて進む
  • 立ち仕事・家事:片膝に体重をかけ続けず、床からの立ち上がりを減らすため和式から椅子やベッドの洋式生活へ切り替える

また、慢性的なこわばりや冷えには入浴などで温め、歩いた後に熱を帯びて腫れているときは冷やすといった使い分けや、食事の見直しによる体重管理も膝への負担軽減につながります。


治療ごとの通院頻度と効果を振り返る時期の目安


入院を伴わない保存療法では、お仕事のシフトやご家族の通院付き添いに合わせて受診の間隔を調整していきます。院内でのリハビリや初期の注射は週1回程度から始めることが多いものの、自宅での運動や装具の活用を中心にすれば、数週間から1か月に1回の通院で経過をみることも可能です。


まずは2〜3か月ほどを一つの区切りとして、歩ける距離や買い物・階段での困りごとがどう変化したかを医師と一緒に振り返ります。


ポイント

お薬手帳や内科の検査結果を共有し、自宅での運動と日常動作の工夫を取り入れることで、持病やご家族のサポートと治療を両立しやすくなります。


保存療法を続けるか見直すかの判断基準と医師への相談の仕方


手術以外の治療を数か月続けても歩ける距離が短くなるときや、夜の痛み・膝が抜ける感じが続くときは、治療の中身を見直したり、手術について相談したりする目安になります。


よくある誤解:手術を避けるとは今の治療を続けるだけではない


「手術をしない」ということは、これまでと同じ湿布や電気治療だけを我慢して続けるという意味ではありません。変形性膝関節症では、運動療法や注射などの保存療法も、大切な選択肢の一つです。


現在の治療で変化が乏しい場合でも、運動の内容を見直したり、別の注射やインソールを組み合わせたりする余地があります。また、60代・70代という年齢だけで方針が決まるわけではなく、関節の状態と生活上の希望から選択肢を整理していきます。


歩ける距離・階段・夜間の痛み・膝が抜ける感じは再検討の目安


保存療法を工夫しても次のような状態が続くときは、治療方針の再検討が必要です。


  • スーパーまでの往復など、続けて歩ける距離が目に見えて短くなってきた
  • 手すりを使っても階段の上り下りが難しく、外出を控えるようになった
  • 夜間や安静時にも膝がうずき、睡眠の妨げになっている
  • 歩行中に膝がずれる感じや膝が抜ける感じがあり、転倒しそうで不安がある

これらにあてはまるときは、人工膝関節の手術などもふくめて、医師と話し合う時期といえます。手術を考えるときは、つながりのある大きな病院を紹介してもらい、くわしい検査や相談を進めるのが一般的です。


レントゲン所見と生活の希望を医師に伝えるための準備


レントゲン画像の変形が強くても痛みが軽い方がいる一方で、画像上の変化は中程度でも立ち仕事や階段で強く困っている方もいらっしゃいます。そのため、画像所見とご自身の生活の希望をすり合わせることが大切です。


受診の前には、「どの動作で一番困っているか」「何分くらい続けて歩けるか」「これまで行った治療」をメモにまとめておきましょう。「お薬手帳(持病・腎機能など)」「仕事や家族の付き添いなど手放したくない役割」も書き添えておくと、医師に状況が伝わりやすくなります。


愛知県名古屋市で通いながら相談できる当院の診療体制


長引く膝の痛みは、総合病院だけでなく、通院しやすい地域のかかりつけ医で相談しながら治療方針を整理していく方法もあります。当院(えさき整形外科リウマチ科)は、地下鉄桜通線鶴里駅から北へ徒歩5分に位置し、整形外科とリウマチ科の診療を行っています(診療時間の詳細はアクセスページでご確認ください)。


痛みの箇所が同じでも症状は患者様によって異なるため、レントゲンやエコーでの確認を踏まえ、幅広い選択肢のなかから方針を一緒に考えてまいります。必要に応じて連携する病院へのご紹介も行っておりますので、今の治療を続けるか迷われている方もお気軽にご相談ください。


よくある質問


Q1. 変形性膝関節症で湿布を貼り続けても大丈夫ですか?


A. 湿布は痛みをやわらげる助けになりますが、長く貼り続けると皮ふがかぶれることがあります。消炎鎮痛成分を含む湿布を一度にたくさん使うことは避け、医師に言われた枚数や使い方を守ってください。


Q2. 仕事や家族の介護で休めないのですが、半月板損傷や変形性膝関節症の治療は続けられますか?


A. 入院しない治療(保存療法)では、多くの場合、お仕事のシフトや付き添いの予定に合わせて通院の間かくを決められます。サポーターや家でできる筋力トレーニング、職場での動き方の工夫を組み合わせれば、ふだんの役割を続けながら治療を進められることもあります。ただし半月板損傷では、膝が引っかかって動かなくなるなど、症状によっては手術や安静が必要になることもあります。


Q3. 朝起きたときに膝だけでなく手指のこわばりもあります。変形性膝関節症とは違いますか?


A. 朝の手指のこわばりや、左右の両方でいくつもの関節が痛んだり腫れたりする場合は、関節リウマチが関わっている可能性もあります6。同じ膝の痛みでも原因によって選ぶべき薬や治療法が異なるため、気になる症状があれば診察時にあわせて医師へお伝えください。


参考文献


1. Yan L, Li D, Xing D et al. Comparative efficacy and safety of exercise modalities in knee osteoarthritis: systematic review and network meta-analysis. BMJ (Clinical research ed.). 2025. PMID: 41093618 / DOI: 10.1136/bmj-2025-085242

2. Chen Z, Wang C, You D et al. Platelet-rich plasma versus hyaluronic acid in the treatment of knee osteoarthritis: A meta-analysis. Medicine. 2020. PMID: 32176063 / DOI: 10.1097/MD.0000000000019388

3. 整形外科 | 診療科・部門 | 日本大学病院. https://www.nihon-u.ac.jp/hospital/division/orthopedics

4. 国立健康危機管理研究機構. 糖尿病の治療ってどんなものがあるの?(糖尿病情報センター). https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/010/01.html

5. ・高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について(◆平成30年05月29日医政安発第529001号薬生安発第529001号). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc3422&dataType=1

6. 関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA) | KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト. https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000402/


向藤原 由花

医師


えさき整形外科リウマチ科

院長

向藤原 由花

経歴
1989年
名古屋市立大学医学部卒業名古屋市立大学整形外科入局
名古屋市立東市民病院(現東部医療センター)整形外科
名鉄病院整形外科
春日井市民病院整形外科勤務
1995年
名古屋市立大学整形外科
1999年
JA愛知厚生連海南病院整形外科
リウマチ関節外科部長兼リハビリテーション科代表部長
2017年
医療法人紫雪会江崎整形外科院長
資格・所属学会
【資格】
日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医
医学博士
【所属学会】
日本整形外科学会
日本リウマチ学会
JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ学会)
日本人工関節学会
日本股関節学会
骨折治療学会
中部整形外科災害外科学会
日本運動器学会