
目次
膝の痛みが「どの段階」なのか分からず不安な方へ
階段の昇り降りや正座のたびに膝が痛む。接骨院に通っても変化が乏しく、手術が必要な状態なのか気になる——愛知県内でもそうした声を多くいただきます。この記事では、変形性膝関節症のステージごとの症状の特徴と、切らない治療の選択肢、検査の流れを整理してお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 変形性膝関節症はKL分類でステージ1〜4に整理され、症状の現れ方には段階ごとの傾向がある
- レントゲンとエコーを組み合わせ、骨や軟部組織の状態を確認しながら方針を検討する
- 運動療法や生活の工夫を基本に、状況に応じて薬物療法や注射など保存療法を組み合わせる
変形性膝関節症のステージ分類と段階別の症状の特徴

進行度の目安として広く用いられているのが、レントゲン画像をもとにしたKL分類(Kellgren-Lawrence分類)です。グレード1〜4に整理され、診療ガイドラインでも方針を検討する際の参考として挙げられています1。ただし、画像上の変化と痛みの強さは必ずしも一致しません。自覚症状と併せた総合的な評価が前提になります。
初期(ステージ1〜2):立ち上がり時の違和感と関節軟骨・半月板の変化
朝起きた直後、あるいは椅子から立ち上がる瞬間に「ズキッ」とくる。歩き出すと薄れていく——初期はこのパターンが多くみられます。レントゲンでは関節の隙間がわずかに狭まっていたり、小さな骨棘(こつきょく)が確認されたりする段階です。見落とされやすいのが半月板の変化で、加齢に伴う傷みが膝の内側の痛みや引っかかり感につながっている場合もあります。「まだ軽いから」と様子をみるだけで過ごすより、今の状態を把握しておきたい時期といえます。
中期(ステージ3):正座や階段昇降の困難と関節の変形進行
中期に入ると、正座やしゃがみ込み、階段の下りなど膝を深く曲げる動作ではっきりした痛みが出てくることがあります。関節の隙間が明らかに狭くなり、骨棘も増え、膝に水がたまる(関節水腫)ことで腫れや熱っぽさを感じる方もいます。可動域が狭まり、正座がしづらくなったとご相談いただくことも少なくありません。日常動作に制限が出始めるこの段階が、治療方針を見直す一つの節目になります。
進行期(ステージ4):安静時痛と歩行への影響・日常生活の不便さ
進行期になると関節の隙間はほとんど残らず、骨同士が近接した状態になります。歩いているときだけでなく、座って休んでいるときや夜間に痛みを感じる方もおり、O脚変形が目立って歩き方が変わる場合も。買い物や送迎といった外出の負担が増え、活動量が落ちることで筋力低下が重なる点にも注意が必要です。この段階では手術療法も選択肢としてご説明しますが3、生活状況やご希望を踏まえた検討が欠かせません。
えさき整形外科リウマチ科における検査・診察の流れ
膝の痛みの背景には、変形性膝関節症だけでなく半月板の傷み、関節リウマチなどの炎症性疾患、腱や滑膜の問題といった複数の要因が絡みます。そこで当院では、痛む場面や経過を問診で丁寧に伺ったうえで、画像による客観的な確認を組み合わせています。
レントゲン検査で観察する骨の間隔と骨棘の形成状態
レントゲンで確認するのは、大腿骨と脛骨のあいだの隙間(軟骨の厚みの目安)、骨棘の有無、骨の硬化や変形の程度です。ここで押さえておきたいのが、寝た状態ではなく立って体重をかけた姿勢で撮影するという点。荷重時のほうが隙間の狭まりが反映されやすく、KL分類のグレード判定を行ううえでも参考になります。両膝を撮影して左右差や脚全体の傾きをみれば、O脚傾向や負担の偏りも把握しやすくなります。
もっとも、レントゲンで得られるのは骨の情報が中心で、軟骨や半月板そのものを直接映すものではないという限界があります。内部構造をより詳しく評価する必要があると判断した場合には、MRI検査が可能な医療機関へご紹介する流れをとっています1。
超音波(エコー)検査で捉える炎症・水腫と軟組織の状態
その限界を補うのが超音波(エコー)検査です。当院ではエコーを備えており、関節液の貯留の程度、滑膜の厚みや炎症の様子、周囲の腱・靱帯の状態をその場でリアルタイムに観察できます。膝を動かしながら痛む部位を確かめられるため、「どこが痛みの発生源になっていそうか」を患者様と画面を一緒に見ながら共有しやすいのも特徴です。放射線被曝がなく、経過を追って繰り返し確認しやすい点も日常診療で重視しています。必要に応じて骨密度測定装置による評価も加え、骨の状態を含めた全体像を整理していきます。
手術を避けたい方のための保存療法(切らない治療)の選択肢

変形性膝関節症では、手術を行わない保存療法から組み立てるのが基本的な考え方とされています1。運動療法と生活指導を土台に、痛みの状況に応じて物理療法や薬物療法、関節内注射などを重ねていきます。
物理療法・リハビリテーションによる膝の負担軽減
中心になるのは運動療法です。太ももの前面(大腿四頭筋)やお尻まわりの筋力を保つことで膝関節にかかる負担を分散させ、痛みとのつき合い方を整えていくことを目指します。ガイドラインでも、運動療法と患者様への説明・教育は保存療法の基本として位置づけられています1。
当院ではリハビリテーション科で理学療法士が関わり、機器も併用します。ウォーターベッドや牽引器で全身の緊張をゆるめ、低周波治療器や超音波治療器を痛みの緩和を目的に用い、慢性的な痛みには集束型衝撃波やレーザーを使用する方法もあります。大切なのは「通って受けるだけ」で終わらせず、自宅で続けられる運動を身につけること。 頻度や強度は膝の状態に合わせて調整していきます。
薬物療法・ヒアルロン酸注射と日常生活の工夫
痛みが強い時期には消炎鎮痛剤の内服や外用薬を用います。ただし長期にわたる自己判断での服用は胃腸や腎機能への負担が生じることもあり、量と期間の管理が前提です。関節内へのヒアルロン酸注射も広く行われる方法ですが、感じ方や経過には個人差があります。当院ではAPS療法など再生医療分野の取り組みについてテレビ番組で紹介された経緯があり、保存療法で変化が乏しい方への選択肢としてご説明しています(自由診療にあたる治療は費用や適応を事前に確認します)。
生活面の工夫も侮れません。体重を1kg減らすだけでも歩行時の膝への負荷は数kg分軽くなるとされ、減量は取り組む価値があります。加えて、靴の中敷き(足底装具)やサポーター、和式から洋式への生活動作の切り替え、深いしゃがみ込みを避ける習慣なども膝を守る助けになります。
自身の状態に合う治療を選ぶための判断基準と注意点
保存療法を優先できるケースと専門医への相談のタイミング
保存療法を軸に進めやすいのは、痛みが動作時に限られ、仕事や家事、お孫様の送迎といった日常生活を続けられている段階です。ステージ1〜3では、運動療法と生活調整、必要に応じた薬物療法や注射を組み合わせ、膝への負担を減らしながら経過を追っていくことを目標に据えます。
一方、次のような状況では早めのご相談をおすすめします。膝の腫れが引かない、夜間や安静時に痛む、膝が伸びきらない・引っかかる、歩ける距離が明らかに短くなった。 いずれも半月板の状態や炎症の程度を確認しておきたいサインです。手術療法には関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などがあり、変形の程度・年齢・活動量によって適応が異なります3。入院やリハビリテーションの期間も方法ごとに違うため、「手術しかない」と思い込む前に選択肢の全体像を知っておくと、判断の助けになります。愛知県内で通院を続けやすい環境かどうかも、治療を継続するうえで見落とせない要素です。
変形性膝関節症に関する誤解:痛み止めへの過度な依存や自己判断
よく耳にするのが「湿布を貼り続けていれば済む」という考え方です。湿布や鎮痛薬は痛みを和らげる助けにはなりますが、関節の状態そのものを確認したことにはなりません。痛みが薄れたまま膝に負担をかけ続け、変形が進んでから受診に至るケースもあります。
グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメント、漢方薬についてもご質問をいただきます。現時点では、これらが軟骨の変化を止めるという十分な科学的根拠は確立されていないと整理されており、診療ガイドラインでも積極的に推奨される位置づけにはありません1。試されること自体を否定するものではありませんが、運動療法や適切な評価の代わりにはならない、とお考えいただくのが妥当です。「自力で元に戻す」ことを目指すより、進行の速度をゆるやかにし、痛みと生活の折り合いをつけていく視点が現実的な出発点になります。
よくある質問
Q1. 変形性膝関節症ステージ3の治療法にはどのようなものがありますか?
A. ステージ3では、運動療法や物理療法を中心とした保存療法を続けながら、痛みの状況に応じて薬物療法や関節内注射を組み合わせるのが一般的です。腫れや水腫を繰り返す場合はエコーで炎症の様子を確認し、生活動作の工夫も並行して検討します。保存療法で変化が乏しいときには、手術療法を含めた選択肢をご説明します。
Q2. 変形性膝関節症のレベル分類とは何ですか?
A. レントゲン画像に基づくKL分類(Kellgren-Lawrence分類)が広く用いられています。関節の隙間の狭まりや骨棘の程度によりグレード1〜4に分けられますが、画像上のグレードと痛みの強さは一致しないことがあるため、自覚症状や生活への影響と併せて評価します。
Q3. ステージ4とはどのような状態を指しますか?
A. 関節の隙間がほとんど残らず、骨同士が近接した状態で、骨棘の形成や変形が明らかな段階です。歩行時に加えて、安静時や夜間に痛みを感じる方もいます。この段階でも活動量やご希望によっては保存療法を続ける判断があり、方針は一律ではありません。
Q4. グレード4でもリハビリテーションを行う意味はありますか?
A. 筋力や関節の動きを保つ取り組みは、この段階でも検討されます。膝への負担を減らす動作を身につけたり、周囲の筋力を維持したりすることが、日常生活の負担軽減につながる可能性があります。負荷のかけ方は状態によって異なるため、自己流ではなく評価を受けたうえで進めていただくことをおすすめします。
Q5. 接骨院に通っていますが、整形外科も受診したほうがよいでしょうか?
A. 症状に変化が乏しい場合は、レントゲンやエコーで状態を確認しておくと、今の対応が状態に見合っているかを整理しやすくなります。診断に基づいて方針を立て直すという意味でも、一度受診をご検討ください。
参考文献
1. 公益財団法人 日本医療機能評価機構「Minds ガイドラインライブラリ」 https://minds.jcqhc.or.jp/
2. 国立がん研究センター「がん情報サービス」 https://www.cancer.go.jp/
3. 日本外科学会 https://www.jssoc.or.jp/

医師
えさき整形外科リウマチ科
院長
向藤原 由花
名古屋市立大学医学部卒業名古屋市立大学整形外科入局
名古屋市立東市民病院(現東部医療センター)整形外科
名鉄病院整形外科
春日井市民病院整形外科勤務
1995年
名古屋市立大学整形外科
1999年
JA愛知厚生連海南病院整形外科
リウマチ関節外科部長兼リハビリテーション科代表部長
2017年
医療法人紫雪会江崎整形外科院長
日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医
医学博士
【所属学会】
日本整形外科学会
日本リウマチ学会
JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ学会)
日本人工関節学会
日本股関節学会
骨折治療学会
中部整形外科災害外科学会
日本運動器学会
あわせて読みたい関連記事

