
階段の上り下りがつらい膝の痛み、そのままにしていませんか
湿布でしのいでいるうちに、歩き始めや立ち上がりでも膝が痛む。そんな変化に戸惑う方は少なくありません。愛知県で家事や送迎を担う世代ほど、受診は後回しになりがちです。本記事では、膝痛を放置した場合に関節へ生じうる変化、受診を検討したい症状の目安、検査と保存的治療の流れを整理します。
この記事の要点まとめ
- 膝痛を放置すると軟骨がすり減り、変形性膝関節症へ進むことがある
- 腫れ・熱感・安静時の痛みが続く場合は整形外科への相談が望まれる
- レントゲンやエコーで原因を確認し、段階的に保存的治療を検討できる
膝痛の放置で関節はどう悪化するのか?進行の仕組みとリスク

膝の痛みは「そのうち引くだろう」と思われがちですが、関節の中では時間とともに構造的な変化が進んでいることがあります。まずは何が起こりうるのかを知っておきましょう。
軟骨のすり減りと変形性膝関節症への進行プロセス
膝関節では、太ももの骨とすねの骨の間にある関節軟骨がクッションの役割を担っています。この軟骨は加齢や体重、脚の形などの影響で少しずつすり減り、負荷が一部に集中しやすくなるとされます。軟骨がやせると骨同士の間隔が狭まり、骨のふちにトゲ状の変化(骨棘)が生じたり、関節内の炎症で水が溜まる(関節水腫)こともあります2。こうした変化が積み重なった状態が変形性膝関節症と呼ばれます。半月板損傷や靭帯損傷、関節リウマチや痛風が背景に潜んでいる場合もあり、痛みの原因は一つとは限りません。
痛みを我慢して歩くことが関節の負担を増やす理由
痛む側をかばって歩くと、体は無意識のうちに重心をずらします。すると反対側の膝や股関節、腰にも余計な負担がかかりやすくなります。さらに痛みで活動量が落ちれば、太ももの前面にある大腿四頭筋が細り、関節を支える力も弱まっていきます。筋力の低下が関節の不安定さにつながり、それがまた痛みを招く——この循環が、放置によって起こりうる連鎖です。
【誤解を解消】年齢のせいと諦めて放置する前に知っておきたいこと
「もう年だから仕方ない」と受診をためらう方は多いものです。ただ、年齢だけで片付けてしまうと、リウマチや感染など別の疾患が隠れていた場合に気づくのが遅れる可能性があります。歩行が制限される状態が長引けば、外出や家事の機会が減り、全身の活動性にも影響が及ぶことがあります。愛知県内でも、早い段階で状態を把握し、生活動作や運動の工夫を取り入れる方は少なくありません。年齢を理由に諦めず、まず現状を確かめるという選択肢を持っていただきたいと考えています2。
整形外科を受診すべき膝痛の症状チェックと判断の目安
どのタイミングで相談すればよいのか。迷う方のために目安を整理します。
早めの受診を検討したいサイン(腫れ・熱感・安静時の痛み)
次のような症状があるときは、早めのご相談をおすすめします。
- 膝が腫れて熱を持つ、水が溜まった感じがある
- 歩いていなくても、じっとしている時や夜間に痛む
- 膝が完全に伸びない、曲がらない(可動域の制限)
- 急に力が抜ける、引っかかって動かなくなる
- 転倒や捻った直後から強い痛みが続いている
一方、軽い張り感が数日で落ち着き、日常動作に支障がなければ、しばらく経過をみる判断もあり得ます。とはいえ同じ痛みが3週間以上続く、あるいは1年近く繰り返している場合は、自己判断を続けずに一度評価を受けることが望まれます。
動作の始まりに現れる初期サイン(正座や立ち上がり時の違和感)
初期に多いのは、動作の「始まり」に出る痛みです。朝起きて歩き出す最初の数歩、椅子から立ち上がる瞬間、階段を下りる時、正座やしゃがみ込みで感じるこわばり。しばらく動くと軽く感じられるため見過ごされやすいのですが、関節に変化が起こり始めているサインとして受け止めたい症状です。湿布やサポーターで一時的に和らいだように感じても、原因が解決したとは限らない点に注意が必要です。
接骨院や整体院ではなく整形外科での医学的評価が必要な理由
接骨院や整体院では、法令上、レントゲンなどの画像検査や医師による診断は行われません。膝痛の背景には、変形性膝関節症のほか半月板損傷、靭帯損傷、関節リウマチ、痛風など多様な原因があり、原因の見極めがないまま経過をみると、方針が定まりにくくなることがあります。整形外科では、問診と診察に画像所見や必要に応じた血液検査を組み合わせ、医学的な根拠に基づいて方針を検討します2。手術を含む治療全般の判断についても、外科的な視点を踏まえた説明が可能です1。
整形外科で行う詳しい検査と手術を避けるための保存的治療
「受診したらすぐ手術を勧められるのでは」と不安をお持ちの方もいらっしゃいます。実際には、まず状態を把握し、保存的な方法から検討していく流れが一般的です。
レントゲンやエコーによる骨・軟骨・炎症状態の確認
初診では、いつから・どの動作で・どこが痛むかを伺い、膝の可動域や腫れ、圧痛の部位を確認します。そのうえでレントゲン検査により、関節の隙間の狭さや骨の変形、脚のアライメントを立った姿勢で評価します。エコー(超音波)検査を加えれば、放射線を用いずに関節内の水腫や滑膜の炎症、半月板や靭帯周囲の状態をその場で観察できます。当院ではレントゲンとエコーに加え、骨密度測定装置も備えており、骨の状態を含めて総合的に確認する体制を整えています。より詳細な評価が必要と判断した場合には、MRI検査が可能な医療機関へのご案内も行います2。
身体への負担に配慮した物理療法・運動器リハビリテーション
保存的治療の柱は、薬物療法、関節内注射(ヒアルロン酸注射など)、そしてリハビリテーションです。当院ではウォーターベッドや牽引器、低周波治療器、超音波治療器、レーザー、集束型衝撃波といった機器による物理療法を組み合わせ、状態に応じた進め方を検討します。並行して、大腿四頭筋を中心とした筋力トレーニングや可動域の運動を、理学療法士とともに無理のない範囲で続けていきます。なお当院では、自由診療(全額自己負担)としてAPS療法・PRP療法といった再生医療にも取り組んでおり、内容や費用、起こりうる副反応を含めてご説明したうえで選択肢の一つとしてご紹介しています。大切なのは、状態に合った方法を段階的に選んでいくことです。
受診時に医師へ症状をスムーズに伝えるための準備
診察をスムーズに進めるため、膝を出しやすい服装(ゆったりしたズボンやスカート)でお越しください。あわせて、痛み始めた時期、痛む動作、これまで使った湿布や内服薬、他院での検査歴を簡単にメモしておくと役立ちます。受診までの間に痛みが強い時は、無理に歩き続けず、腫れや熱感があれば1回15〜20分程度を目安に保冷剤をタオル越しに当てて安静を保つといった対応が一般に案内されています。感覚が鈍くなるほど冷やし続けないようご注意ください1。
よくある質問
Q1. 膝が痛いときは整形外科に行くべきですか?
A. 腫れや熱感、安静時の痛み、可動域の制限があるときは、早めのご相談をおすすめします。整形外科では医師の診察に加えてレントゲンやエコーによる画像評価が行えるため、原因の見極めを踏まえた方針を検討できます。
Q2. 膝の痛みが1年続く原因は何ですか?
A. 変形性膝関節症のほか、半月板損傷、靭帯損傷、関節リウマチや痛風など、長引く痛みの背景はさまざまです。原因により対応方針が異なりますので、経過が長い方こそ一度あらためて評価を受けることをご検討ください。
Q3. 膝が3週間くらい痛いのはなぜですか?
A. 使いすぎによる炎症が続いている場合や、関節内に水が溜まっている場合などが考えられます。数日で軽快しない痛みが3週間続いているようであれば、自己判断で様子を見続けず、医療機関での確認をおすすめします。
Q4. リハビリを続けても痛みが変わらない場合はどうすればよいですか?
A. 運動の内容や負荷量が状態に合っているかを見直すほか、あらためて画像検査で関節の状態を確認する方法もあります。物理療法の組み合わせや、注射・自由診療の再生医療を含む他の選択肢について、医師にご相談ください。
Q5. 受診したらすぐ手術になりますか?
A. 多くの場合、まずは薬物療法や注射、リハビリテーションなどの保存的治療から検討します。手術を含む方針は、症状や画像所見、生活の状況を踏まえ、患者様と相談しながら決めていきます。
参考文献
1. 日本外科学会. https://www.jssoc.or.jp/
2. 公益社団法人 日本整形外科学会. https://www.joa.or.jp/

医師
えさき整形外科リウマチ科
院長
向藤原 由花
名古屋市立大学医学部卒業名古屋市立大学整形外科入局
名古屋市立東市民病院(現東部医療センター)整形外科
名鉄病院整形外科
春日井市民病院整形外科勤務
1995年
名古屋市立大学整形外科
1999年
JA愛知厚生連海南病院整形外科
リウマチ関節外科部長兼リハビリテーション科代表部長
2017年
医療法人紫雪会江崎整形外科院長
日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医
医学博士
【所属学会】
日本整形外科学会
日本リウマチ学会
JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ学会)
日本人工関節学会
日本股関節学会
骨折治療学会
中部整形外科災害外科学会
日本運動器学会
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