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スポーツの痛みを我慢すると悪化?受診目安と注意点を医師が解説

スポーツの痛みを我慢すると悪化?受診目安と注意点を医師が解説

走るたびの痛み、そのまま練習を続けて大丈夫でしょうか


足首や膝の痛みを湿布でしのぎながら走り続けている——愛知県内の市民ランナーの方から、そうしたご相談をよくいただきます。痛みは体が負荷の大きさを知らせるサインで、我慢を重ねると長期の離脱につながる場合もあります。 悪化しやすい流れと受診の目安、受診前に意識したい点を整理しました。


この記事の要点まとめ


  • スポーツ中の痛みは体が発するサインであり、我慢を重ねると回復に時間がかかる場合があります
  • 安静時痛や2週間以上続く痛みなどは、受診を検討する目安として整理できます
  • エコー検査などで状態を確認しながら、負荷の調整方法を一緒に検討していく進め方があります

スポーツの痛みを我慢して運動を続けると生じる悪化リスク

スポーツの痛みを我慢して運動を続けると生じる悪化リスク

「走っているうちに痛みが薄れるから平気」。ランナーの方からよく聞くお話です。ただ、運動中は交感神経の働きや血流の増加によって痛みを感じにくくなることがあり、痛みが引いた=組織の状態が落ち着いた、とは限りません。負荷が積み重なるオーバーユースの状態では、休息を挟まないまま損傷が広がっていく可能性も指摘されています1


単なる筋肉痛と放置厳禁なスポーツ障害の違い


筋肉痛であれば運動後1〜2日でピークを迎え、数日かけて落ち着いていく経過が一般的とされます。筋肉全体が張るように痛み、押しても「一点」ではなく広い範囲に鈍く響くことが多いものです。


一方、腱や靭帯、骨に微小な損傷が積み重なるタイプのスポーツ障害では、痛む場所を指1本で示せるほど限局し、同じ動作のたびに毎回同じ部位が痛むという特徴が出てくることがあります。押した一点が痛む、走り出しの一歩目から痛む、痛みが2週間以上引かない。この3つが重なるときは、筋肉疲労とは別の視点で状態を確認したいところです。


すねの内側が痛むシンスプリント、膝のお皿の下に症状が出る腱の障害、成長期のお子様に多いオスグッド病。いずれも「休めば軽くなるが、走ると戻る」を繰り返すうちに、疲労骨折や剥離骨折といった状態に進む場合もあると報告されています。


痛みの放置が招く代償動作と二次的な関節トラブル


もう一つ見落とされやすいのが、痛みをかばう動き(代償動作)の影響です。右膝が痛ければ無意識に左足へ体重を預け、着地の衝撃の受け方まで変わってきます。その結果、反対側の足底やアキレス腱、股関節、腰へと負担が広がっていくことも考えられます。


実際、足首の痛みで来院された方が、問診と歩行の確認を進めるうちに反対側の膝や腰の張りを訴える、といったケースは珍しくありません。一箇所の不調が全身のバランスに影響し、復帰までの期間が延びてしまう——痛みを我慢し続けたときに起こりやすい流れです。


さらに痛みが長引けば筋力や柔軟性も低下し、フォームがいっそう乱れるという循環に入りがちです。早い段階で状態を把握しておくことは、再発を防ぐ取り組みを考えるうえでも意味を持ちます1


整形外科を受診すべき痛みの境界線とセルフチェック基準


「どこからが受診すべき痛みなのか」。この線引きは、ご自身ではなかなか判断しにくいところでしょう。日常のなかで確認できる目安を整理してみます。


日常生活の動作や安静時痛の有無で判断する基準


まず注目していただきたいのが、スポーツ中だけの痛みか、日常生活にまで出ているかという点です。以下に当てはまる項目が増えるほど、医療機関でご相談いただく段階に近づいていると考えられます。


  • 階段の昇り降り、とくに下りで痛みが出る
  • 通勤時の平地歩行でも違和感が続く
  • 運動をやめて数時間経っても痛みが残る
  • 夜、じっとしていても痛む(安静時痛)
  • 痛みで目が覚める、寝返りで痛む
  • 2週間以上、同じ場所の痛みが軽くならない

なかでも安静時痛や夜間痛は、負荷をかけていない状態でも組織が反応しているサインとして扱われます。「走らなければ痛くない」段階と「歩いても痛い」段階とでは、想定される状態が変わってきます1


局所の腫れ・熱感・関節の動かしにくさが見られる場合


見た目や触った感触の変化も、大切な手がかりになります。左右を見くらべて痛む側だけ腫れている、押すと熱っぽい、皮下に内出血の色がある。こうした所見があるときは、早めに整形外科でご相談ください。


関節の曲げ伸ばしに制限が出ている、しゃがみ込めない、足首が上下に動ききらない、体重をかけると力が入りにくい——といった機能面の変化も見過ごせません。「痛いけれど動かせる」と「動かせる範囲そのものが狭くなった」では、意味合いが異なります。


受診の際は、痛み始めた時期、痛む動作、練習量の変化、履いているシューズの状態などをメモしておくと問診がスムーズです。数か月後に大会を控えている、といったご事情も遠慮なくお伝えください。目標時期が分かれば、負荷の調整計画も具体的に検討しやすくなります。


痛みを悪化させないための受診前・治療時の注意点

痛みを悪化させないための受診前・治療時の注意点

痛みと付き合いながら競技を続けたい方こそ、初期対応の考え方を知っておくと選択肢が広がります。


湿布による痛みのマスキングと自己判断のリスク


湿布や市販の鎮痛薬は、つらい症状をやわらげる手段として役立ちます。ただ、これらは痛みという「サイン」を一時的に見えにくくするもので、組織の状態そのものを変えるわけではありません。痛みが薄れた分だけ走れてしまい、損傷が進んでいることに気づくのが遅れる。この流れには注意が必要です。


急性期にはRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)が基本の初期対応とされています。腫れや熱感がある間は冷やし、慢性的な張りや血流の滞りが主体の時期には温めるなど、時期による使い分けも意識したいポイントでしょう1湿布で3か月以上しのいでいる状態は、一度立ち止まって確認したいタイミングと言えます。


エコー検査による軟部組織の確認と運動制限の考え方


レントゲンは骨の状態を映しますが、腱や靭帯といった軟部組織の様子までは分かりません。そこで用いられるのが超音波(エコー)検査です。当院ではエコーとレントゲンを備え、腱の厚みや炎症を思わせる所見、関節内の水の貯留などを、その場で画面を一緒に見ながら確認していきます。放射線被ばくを伴わず、関節を動かしながら観察できる点も特徴です。


「受診したら走るのを全面的に止められるのでは」と心配される方は少なくありません。実際には状態に応じて、距離やペース、路面、練習頻度を調整しながら経過をみる進め方も検討します。一律に禁止するのではなく、どこまでなら負荷をかけられるかを一緒に探るという発想です。 運動の中止が望ましい状況かどうかも、検査所見を踏まえて丁寧にご説明します。


痛む部位に配慮した代替トレーニングとセルフケア


患部を休ませる期間も、体力づくりまで完全に止める必要はありません。水中歩行やエアロバイク、上半身の筋力トレーニングなど、痛む部位への衝撃を抑えつつ心肺機能を保つクロストレーニングという方法があります。


あわせて、股関節まわりや足首の柔軟性を高めるストレッチ、体幹の安定性を養うトレーニングは、フォームの乱れを整える土台になります。入浴後、体が温まった状態で行うと取り組みやすいはずです。


当院は名古屋市南区で整形外科・リウマチ科として診療しており、リハビリテーション部門と連携しながら、超音波治療器や集束型衝撃波などの機器も状態に応じて用いています。仕事や家庭で時間が取りにくい方こそ、短時間でも状態を確認する機会を持つことが、競技を続けやすくすることにつながる場合があります。 愛知県内で運動を続けたい方は、痛みが日常生活に出始めた段階でご相談ください。


よくある質問


Q1. 運動をしていると痛みが薄れていくのはなぜでしょうか。

A. 血流が増えて体温が上がること、興奮状態で痛みを感じにくくなることなどが関係すると考えられています。痛みが軽くなったからといって、組織の状態が変わったとは限りません。運動後や翌朝に痛みが戻る場合は、負荷が過剰になっている可能性を念頭に、状態の確認をご検討ください。


Q2. 運動中に頭がガンガンする感じがあります。整形外科の相談内容でしょうか。

A. 運動に伴う頭痛は、脱水や血圧の変動、首や肩まわりの緊張など要因がさまざまです。まずは水分補給と休息を。繰り返す場合や強い症状があるときは、内科や脳神経外科など症状に応じた診療科でのご相談をご検討ください。


Q3. お子様の部活での痛みは、どのように気づけばよいでしょうか。

A. 成長期はオスグッド病など特有のスポーツ障害が起こりやすい時期とされています。「痛い?」と聞くと我慢して否定することもあるため、行動の観察が手がかりになります。正座やしゃがみ込みができているか、走り方や階段の動きに左右差はないか、練習後に膝や踵をさすっていないか、といった点を見てみてください。


Q4. 痛みが出てから受診まで、どのくらい様子を見てよいですか。

A. 明らかな腫れ・熱感・変形があるとき、体重をかけられないときは、様子見をせず早めのご相談をご検討ください。それ以外でも、同じ場所の痛みが2週間以上続く、日常の歩行に支障が出ているという場合は、状態の確認をおすすめします。


Q5. 受診の際に用意しておくとよいものはありますか。

A. 普段のシューズ、練習量や痛みの経過を記したメモをお持ちください。大会など目標としている予定があれば、その時期もお知らせいただけると助かります。動きを確認するため、膝や足首を出しやすい服装だと診察が進めやすくなります。


参考文献


1. 日本医師会. 医療・健康情報(疾病、運動器の健康、患者と医療者の情報). https://www.med.or.jp/


向藤原 由花

医師


えさき整形外科リウマチ科

院長

向藤原 由花

経歴
1989年
名古屋市立大学医学部卒業名古屋市立大学整形外科入局
名古屋市立東市民病院(現東部医療センター)整形外科
名鉄病院整形外科
春日井市民病院整形外科勤務
1995年
名古屋市立大学整形外科
1999年
JA愛知厚生連海南病院整形外科
リウマチ関節外科部長兼リハビリテーション科代表部長
2017年
医療法人紫雪会江崎整形外科院長
資格・所属学会
【資格】
日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医
医学博士
【所属学会】
日本整形外科学会
日本リウマチ学会
JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ学会)
日本人工関節学会
日本股関節学会
骨折治療学会
中部整形外科災害外科学会
日本運動器学会